こんにちは、rinnshannです。

一分一秒を争う救急医療の現場において、必ずしも必要でないところに救急搬送のリソースが割かれてしまう状況は、本当に必要としている方にとって大きなリスクとなります。特に、救急車がタクシー代わりに使われるようなケースが後を絶たない現状は深刻です。
こうした状況を改善するためには、「#7119(救急安心センター事業)」などの活用を市民に促し、本当に緊急性の高い場合にためらわず救急車を呼べるように、救急体制全体を守ることが求められています。
救急車「有料化」モデルケース:三重県松阪市の「選定療養費」導入とその効果
近年、全国的に救急車の出動件数が過去最多を更新し、その約半数を占める軽症者の利用が重症者への対応遅れを引き起こすという問題が深刻化しています。これを受け、国全体での本格的な「救急車の有料化」議論が進む中、自治体レベルで独自の対策を講じ、注目を集めている事例があります。
中でも、三重県松阪市を中心とする松阪地区広域消防組合と協力病院が2024年6月から開始した**「選定療養費」の徴収**は、救急車利用の適正化に向けた全国的なモデルケースとして注目されています。
導入された「有料化」の仕組み
松阪地区の3つの基幹病院で導入されたのは、救急車利用の適正化を目的とした「選定療養費」の徴収制度です。これは救急車そのものの利用料を有料化したわけではなく、病院の制度を利用したものです。
この制度は、救急車で搬送された患者のうち、病院での診察の結果、入院に至らず、医師が軽症と判断した患者を対象としています。徴収額は7,700円です。
この導入の目的は、「コンビニ受診」と呼ばれる安易な救急車利用を抑制し、本当に緊急性の高い患者のために救急体制を維持することにあります。ただし、緊急性があると判断された場合や、公費負担医療の対象者などは徴収の対象外となります。
導入1カ月後の効果:出動件数が約2割減少
制度開始から約1カ月(2024年7月時点)の運用実績は、初期の目標達成に向けて一定の効果を示しました。
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出動件数の減少: 制度導入後、救急車の出動件数は前年同期比で約22%減少したと報告されています。
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現場到着時間の改善: 出動件数が減ることで、遠方の署からの応援出動が減少し、救急隊の現場到着時間の遅延リスクが緩和されることが期待されます。これにより、「助かる命が助からない」という最悪の事態を防ぐための時間的余裕が生まれます。
松阪地区広域消防組合は、制度の導入後も「緊急性がある場合は、ためらわずに呼んで」と市民に呼びかけており、緊急性の有無の判断で市民が利用を躊躇することのないよう配慮しています。
課題と今後の議論
松阪市の事例は効果を示しましたが、救急車の有料化を巡る議論には依然として大きな課題が伴います。
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「軽症」判断の難しさ: 徴収の対象を「入院に至らなかった軽症者」に限定しているものの、救急現場で救急隊員が緊急性の有無を正確に線引きすることは難しく、最終的には搬送先の医師の判断に委ねる必要があります。
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真に必要な患者の利用抑制: 有料化(または高額な徴収)は、低所得者層や高齢者が、たとえ緊急性が高くても費用を恐れて利用をためらう事態を引き起こし、医療アクセスの公平性を損なうリスクがあります。
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全国的な制度設計: 総務省など政府部内でも救急車の有料化に関する議論は長年行われていますが、「軽症者」の減少には、有料化よりも市民への適切な教育が有効だとする意見や、有料化するならば2万円以上の高額でなければ抑制効果が見られないという調査結果もあり、全国一律の制度化には慎重な検討が続いています。
松阪市の事例は、「救急車そのものの有料化」ではない形で、軽症者の利用抑制に成功した初期のモデルケースとして、今後の国の議論や他の自治体の対策に大きな影響を与える可能性があります。
以上です、引き続きよろしくお願いいたします。


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